1分でわかる忙しい人のための留賛（りゅうさん）の紹介
留賛、留贊（りゅうさん）、字は正明（せいめい）、出身は会稽長山、生没年（183～255年）
後漢末から三国時代の呉に仕えた将軍であり、その激しい性格と不屈の意志で知られる人物である。
若くして郡吏となり、黄巾賊の残党である呉桓を討ち取ったが、その際に脚を負傷して伸ばすことができなくなった。だが彼は戦場に立つことを諦めず、自ら刃で脚の腱を切って治療を試み、命がけで再起を果たした。
この壮絶な行為は凌統の耳に届き、彼の推挙によって留贊は呉の軍に登用され、戦功を重ねて左将軍にまで昇進する。 建興元年（252年）には諸葛恪の東興の戦いで先鋒を務め、魏軍を大破してその勇名を轟かせた。
晩年、五鳳二年（255年）の淮南遠征に従軍したが、途中で病にかかり、帰途に魏の追撃を受けて戦死した。七十三歳であった。最期まで忠義を貫き、呉の民から深く惜しまれた武人である。
留賛を徹底解説！呉の烈将が自らの脚を断ち戦場に復帰した生涯
若き日の留賛と壮絶な脚の治療
会稽長山に留賛（本来は留贊）という青年がいた。郡の官吏をしていたが、血の気が多く、読書の虫でもあった。『史記』『漢書』『後漢書』の三史を片手に「自分もこうありたい」と唸っては、ため息をつくのが日課であった。
黄巾の残党・呉桓が蜂起したと聞けば、彼は真っ先に兵を率いて討伐に向かった。戦場では目の色を変えて突撃し、ついに呉桓本人を斬り捨てる。しかしその裏で、彼の片足は深く裂かれていた。
傷は膿み、足は固まり、以後は伸ばすこともできなくなった。戦場の英雄が、一夜にして足を引きずる男となったのである。
それでも留賛は腐らなかった。むしろ、戦場復帰への焦りと自身の怒りが混じり合い、彼を一層燃やした。 ある時に親族にこう嘆いた。
「いま天下は乱れ、英雄が乱立している。富も名も定まらぬ時代に、足を引きずって巷に沈むとは、死んだも同じではないか。命を賭けてでも足を治し、再び戦場に立つ者となりたい」
親族は「そこまでしなくてもよい」と皆止めたが、そういう忠告にこそ火をつける男だった。
留賛は刀を手に取り、負傷した足の腱を自ら切り裂いた。
刃が肉を割き、血が噴き出した。意識が遠のくなか、驚いた家族が慌てて足を引き伸ばす。
やがて傷が癒えると、奇跡のように足は伸び、ぎこちないが歩けるようにはなった。
世の人が「狂気」と呼んだその行為で、彼は再び立ち上がる力を得たのである。
この一件ののち、彼は再び戦場へと戻り、足を引きずりながらも、心だけは誰よりも早く駆け抜けていた。
凌統の推挙と呉初陣での功績
留賛が自ら足を治し、再び立ち上がったという噂は、呉の名将・凌統の耳にも届いた。
「そんな無茶をする者がいるのか」
凌統はその気概に心を打たれ、すぐに会見を求めた。
実際に会った留賛は、質素な衣の下に燃えるような闘志を宿しており、「この者は国家のために使うべきだ」と凌統は確信した。
凌統の推挙を受け、孫権は留賛を登用し、まずは試用として軍に加えた。
初陣で留賛は勇猛に戦い、敵を討ち破って功を立てる。
以後も戦場でたびたび武功を重ね、ついに屯騎校尉へと昇進した。
彼の武だけでなく、口もまた切れ味鋭かった。
留賛は、いわゆる「忖度できない男」だった。
事あるごとに諫言を申し出ては、誰彼構わずズバッと切り込む。孫権はこれを嫌うどころか、むしろ畏れ敬った。
東興の戦いでの活躍
建興元年（252年）冬、孫権薨去後の混乱をついて、魏の諸葛誕と胡遵が大軍を率いて東興に攻め寄せてきた。
迎え撃つ呉軍の指揮は太傅・諸葛恪。防衛の要として、前軍の指揮を任されたのが丁奉・呂拠（呂據）・唐咨、そして留賛だった。
戦端を開いたのは丁奉で、魏軍の前線を打ち破り、敵陣に楔を打ち込むような突撃を決める。
そこへ留賛・呂拠・唐咨が相次いで到着し、丁奉軍と合流したことで戦況は一気に呉有利へと傾いた。
敵軍は混乱し、まとまりのないまま総崩れとなる。諸葛恪はこの好機を逃さず、全軍に追撃を命じ、呉軍は圧勝を収めた。
この戦いでの功績によって、留賛は滅寇将軍に任命され、のちに左将軍へと昇進する。
晩年の出征と最期
五鳳二年（255年）、魏の毌丘倹と文欽が寿春で反乱を起こした。
呉の孫峻は二人の援軍のため自ら軍を率いて出征し、留賛を左護軍に任じて節を授け、呂拠（呂據）とともに随行させた。
七十を越えてなお、老将は最前線に呼び出される。
しかし、寿春へ向かう途中で留賛は病に罹る。
すでに魏の文欽が敗北して呉に降伏したため、孫峻は撤退を決め、留賛に車重を率いて先に帰還するよう命じた。だが帰途、魏の将・蔣班が四千の兵を率いて追撃して来る。
病を押しての行軍は、兵を整えられず、戦う力はほとんど残っていなかった。
留賛は敗北を悟り、印綬を部下に託して言った。
「私はこれまで常に、自分の作法に従って戦ってきた。だが今は病に倒れ、もはや何一つその術を尽くすことができぬ。これもまた、天の定めた運命なのだ。」
部下は涙を流して拒んだが、留賛は刀を抜いて叱咤した。命令は命令である。
やむなく印綬を受け取った部下たちは、振り返ることもできずに去っていった。
留賛は将として敵に臨むとき、彼は必ず髪を振り乱し、天に向かって叫び、声高に歌い上げる。
それに応じて兵たちが声を合わせると、不思議なほど士気が上がり、戦えば必ず勝利を収めてきた。
彼は叫び最期の戦いに臨んだ。 しかし、このときばかりは天も黙して応えず魏軍は押し寄せ、老将は戦場に倒れた。享年七十三。
彼の死を知った人々は深く悲しみ、その忠義と勇気を惜しんだ。
子の留略と留平は将軍となり、父の志を継いで呉に仕えた。
だが、戦場で叫びを上げた男の声だけは、二度と戻らなかった。
参考文献
- 参考URL：留贊 – Wikipedia
- 三國志 : 呉書十九 : 孫峻傳 – 中國哲學書電子化計劃
- 三國志 : 呉書十九 : 諸葛恪傳 – 中國哲學書電子化計劃
- 三國志 : 呉書十 : 丁奉傳 – 中國哲學書電子化計劃
- 資治通鑑/巻075 – 维基文库，自由的图书馆
- 資治通鑑/巻076 – 维基文库，自由的图书馆
留賛のFAQ
留賛の字（あざな）は？
字は正明（せいめい）です。
留賛はどんな人物？
留賛は気性が激しく、正直で勇敢な人物です。兵法書や『史記』『漢書』『後漢書』を読み努力家でもありました。
留賛の最後はどうなった？
五鳳二年（255年）、病の身で魏の蔣班軍に追撃され、戦場で討ち死にしました。享年七十三歳です。
留賛は誰に仕えた？
呉の孫権、孫亮に仕えました。
留賛にまつわるエピソードは？
若き日に足を負傷した際、自らの足の腱を切って治したという逸話が有名です。その不屈の精神は後世まで語り継がれました。
コメント